開業届は開業の日から1か月以内、青色申告承認申請書は原則としてその年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内)に提出します。2枚を同じ日に出せば期限切れを防げ、初年度から青色申告の控除を使えます。迷いやすい記入項目と3つの出し方を整理します。
この記事の結論
開業届と青色申告承認申請書は、開業したらできるだけ早く、同じ日にまとめて出すのが安全です。青色申告の期限を過ぎると、その年は白色申告になり、特別控除や赤字の繰越しが使えません。
- 開業届の期限は開業の日から1か月以内。遅れても罰則はないが、青色申告の期限は別に進む
- 青色申告承認申請書は、1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内が期限
- 簿記方式で「複式簿記」を選ぶと、最大65万円(令和9年分以後は要件を満たせば最大75万円)の控除を受ける土台ができる
- 書面を郵送する場合、札幌市内の税務署あての送り先は2026年7月10日から業務センターに集約されている
- 控えやe-Taxの受信通知は、口座開設や融資・補助金の申請で求められるので保管しておく
開業届と青色申告承認申請書はいつまでに出す?
開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。提出期限は開業の日から1か月以内で、遅れても罰則はありません。注意したいのは青色申告承認申請書のほうで、期限を過ぎるとその年は白色申告で確定申告することになります。
青色申告承認申請書の期限は、原則として青色申告をしたい年の3月15日までです。その年の1月16日以後に開業した場合は、開業の日から2か月以内になります。1月1日〜15日に開業した場合は、その年の3月15日が期限です。開業届と同じ日に出してしまえば、期限を気にする必要がなくなります。
| 書類 | 出す人 | 期限 | 出さない・遅れた場合 |
|---|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届) | 事業を始めたすべての個人 | 開業の日から1か月以内 | 罰則はないが、口座開設などで控えを求められる場面がある |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 青色申告をしたい人 | その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内) | その年は白色申告になる |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 生計を一にする家族に給与を払う人 | その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合や、新たに専従者がいることとなった場合は、その日から2か月以内) | 家族への給与を必要経費にできない |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 従業員を雇う人 | 給与支払事務所等を開設した日から1か月以内 | 遅れても提出は必要。源泉所得税の納付は給与を払った月から始まる |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 給与の支払いを受ける人が常時10人未満の事業者 | 期限はなし。提出した月の翌月末日までに通知がなければ、翌々月の納付分から特例が適用される | 源泉所得税を毎月納める |
| 所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書 | 在庫や設備があり、法定の方法以外を選びたい人 | 最初の確定申告期限まで | 法定の方法(最終仕入原価法・定額法)で計算する |
開業日は「実際に事業を始めた日」で書く
開業日は、最初の受注や店舗のオープンなど、実際に事業を始めた日を書きます。準備を始めた日までさかのぼって開業日にすると、青色申告承認申請書の「開業の日から2か月以内」がすでに過ぎていることがあります。請求書や契約書の日付と矛盾しないかを基準に決めましょう。
開業届の書き方は?迷いやすい項目と記入のポイント
様式は国税庁のサイトから入手でき、e-Taxやスマートフォンからも作成・提出できます。記入は短時間で終わりますが、手が止まりやすいのは次の項目です。
| 項目 | 書き方 | 迷ったときの考え方 |
|---|---|---|
| 納税地 | 住所地・居所地・事業所等から選ぶ。原則は住所地 | 事業所の所在地を納税地にする場合は、納税地の変更に関する届出書も出す |
| 職業 | 「飲食店」「Webデザイナー」など実態がわかる名称 | 個人事業税の業種の判定に関わることがあるため、実態どおりに書く |
| 屋号 | 決まっていれば記入。空欄でもよい | 屋号付きの口座を作る予定なら、口座名義と同じ表記にそろえる |
| 届出の区分 | 「開業」を選ぶ | 事務所の移転や廃業も、同じ様式で届け出る |
| 所得の種類 | 多くの業種は「事業(農業)所得」 | 部屋や駐車場を貸す事業は「不動産所得」 |
| 開業・廃業等日 | 実際に事業を始めた日 | 青色申告承認申請書の期限の起点になる |
| 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無 | 青色申告承認申請書を出すなら「有」 | 消費税の届出は、課税事業者を選ぶ場合などに検討する |
| 事業の概要 | 何を・誰に・どのように売るかを具体的に | 後から事業内容を説明するときの記録にもなる |
| 給与等の支払の状況 | 専従者・使用人の人数と給与の定め方 | 人を雇わない場合は記入しない |
屋号は後から変えられますし、空欄のまま出しても受け付けられます。悩みすぎて提出が遅れるより、決まっている内容で早めに出すほうが実務上は有利です。書面で提出する場合は、マイナンバーの記載に加えて本人確認書類の提示か写しの添付が求められます。
青色申告承認申請書の書き方は?簿記方式は「複式簿記」が基本
青色申告承認申請書は1枚の簡単な様式です。氏名・納税地・屋号は開業届と同じ内容で書き、所得の種類と、1月16日以後に開業した場合はその開業日を記入します。控除額に関わるのは「その他参考事項」の欄です。
- 簿記方式は「複式簿記」を選ぶ(簡易簿記では最大の控除を受けられない)
- 備付帳簿名は「仕訳帳」「総勘定元帳」に加え、現金出納帳・預金出納帳・固定資産台帳など使うものにチェックする
- 青色申告の承認の取消しや取りやめをしたことがなければ「無」を選ぶ
- 家族に給与を払う予定があるなら、青色事業専従者給与に関する届出書も同時に用意する
会計ソフトを使えば、日々の入力だけで複式簿記の要件を満たせます。青色申告特別控除は年分によって区分が変わり、令和9年分からは最大75万円の区分ができます。
| 区分 | 令和8年分まで | 令和9年分以後 |
|---|---|---|
| 最大の控除 | 65万円(正規の簿記+期限内申告+e-Taxでの申告か優良な電子帳簿の保存) | 75万円(65万円の要件に加え、仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件に沿った電子データで保存するなど) |
| 中間の控除 | 55万円(正規の簿記+貸借対照表・損益計算書の添付+期限内申告) | 65万円(55万円の要件+期限内のe-Tax申告) |
| 簡易な控除 | 10万円 | 10万円(簡易な簿記で、前々年の収入が1,000万円を超える人は除く) |
控除のほかにも、青色申告には赤字(純損失)を翌年以後に繰り越せる、家族への給与を必要経費にできる、といった白色申告にない利点があります。中小事業者なら、2026年4月1日以後に取得した40万円未満の資産を年300万円まで一括で経費にできる特例も使えます。75万円の区分の要件と準備は青色申告特別控除75万円の要件と令和9年分からの準備で詳しく整理しています。
無料ツール青色申告と白色申告の税額の差を比べる所得の見込みを入れると、青色申告特別控除を使った場合の節税効果を試算できます。計算する
窓口・郵送・e-Tax、どの出し方がよい?
提出方法は3通りです。どれを選んでも効力は同じなので、控えの残しやすさと手間で選びます。
窓口に持参
- 納税地を所轄する税務署に提出する
- 記入の不明点をその場で相談しやすい
- 控え用のコピーを自分で用意する
郵送
- 提出前にコピーを取り、控えとして手元に残す
- 送り先が税務署と異なる地域がある
- 送付した日と内容を記録しておく
e-Tax
- マイナンバーカードがあれば自宅から提出できる
- 送信後の受信通知が提出の記録になる
- 開業届と青色申告承認申請書を続けて送れる
書面で提出した控えには、以前のように税務署の収受日付印が押されなくなりました。提出日を控えに書き込み、コピーと一緒に保管しておきましょう。提出した事実を後から示す場面が多いなら、受信通知が残るe-Taxが便利です。
札幌市内で提出する場合
札幌市内は区によって所轄の税務署が分かれます。中央区は、おおむね西10丁目以東が札幌中税務署、大通西11丁目以西や円山・宮の森などが札幌西税務署の管轄で、個別の住所は国税庁の管轄区域表で確認します。
2026年7月10日からは、市内の5つの税務署あての書面を郵送する場合の送り先が「札幌業務センター」に集約されています。窓口に持参する場合とe-Taxは、これまでどおり所轄の税務署が提出先です。
開業届と一緒に検討したい届出は?人を雇う場合と消費税
家族や従業員に給与を払う場合
生計を一にする家族に給与を払うなら、青色事業専従者給与に関する届出書を青色申告承認申請書と同じ時期に出します。届け出た金額の範囲内で、労務の対価として相当な額が必要経費になります。
従業員を雇う場合は、給与支払事務所等の開設届出書を開設の日から1か月以内に出します。給与の支払いを受ける人が常時10人未満なら、源泉所得税を1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日にまとめて納める納期の特例を申請できます。個人事業所の社会保険は、法定の業種で常時5人以上を使用する場合に加入が義務になります。
消費税とインボイス登録
消費税の納税義務は、基準期間(個人は前々年)の課税売上高で判定します。開業した年と翌年は基準期間の売上がないため、原則として免税事業者です。ただし、特定期間(前年1〜6月)の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります(給与等の支払額で判定することもできます)。
取引先が事業者中心で、インボイス(適格請求書)の発行を求められるなら、登録を検討します。登録すると課税事業者になり、個人は令和8年分まで売上の消費税額の2割を納める2割特例を使えます。令和9・10年分は、登録しなければ免税事業者になる個人を対象に、3割を納める3割特例が設けられています。簡易課税を選ぶ場合、新たに事業を始めた課税期間はその課税期間中に届け出れば適用できます。
個人事業税の申告(北海道)
税務署への開業届とは別に、個人事業税を課す都道府県への申告も必要です。北海道では道税事務所が窓口で、期限や様式は道税事務所で確認してください。個人事業税は事業主控除(290万円)を超える所得に対し、多くの業種で5%(業種により3%・4%)の税率でかかります。
家族への給与、従業員の採用、インボイス登録の有無で、開業時に出す届出の組み合わせが変わります。初回無料で確認できます。
無料で相談する提出後にやること:最初の確定申告までの準備
届出が済んだら、帳簿付けの体制づくりが本番です。開業直後に次の順で整えておくと、最初の確定申告が格段に楽になります。
- 控えと受信通知を保管する開業届と青色申告承認申請書の控え、e-Taxの受信通知は、事業用口座の開設、融資や補助金の申請、保育園の就労証明などで求められます。
- 事業用の口座とカードを分ける生活費と事業の入出金を分けるだけで、記帳の手間と家事按分の迷いが大きく減ります。
- 会計ソフトで複式簿記を始める口座やカードの明細を連携し、毎月まとめて入力します。令和9年分以後の75万円の区分を使うなら、帳簿を電子帳簿保存法の要件で保存できる設定かも確認します。
- 領収書と電子データの保存ルールを決める2024年1月1日以後にメールやネットで受け取った請求書・領収書は、紙に印刷するだけでは足りず、電子データのまま保存します。帳簿と決算関係書類などは原則7年保存です。
- 開業前の支出を整理する開業準備のための広告費や打合せの費用などは「開業費」として資産に計上し、開業後の好きな年に経費にできます。領収書は開業前のものも捨てずに残します。
- 確定申告の時期を押さえる所得税の確定申告は毎年2月16日〜3月15日(土日の場合は翌平日)です。令和8年分は2027年2月16日(火)〜3月15日(月)、消費税の課税事業者は3月31日(水)が申告・納付期限です。
予定納税や住民税・個人事業税の納付まで含めた1年の流れは個人事業主の年間スケジュールにまとめています。記帳そのものを任せたい場合は記帳代行プランの内容と進め方もご覧ください。
無料ツール開業1年目の所得税を速算表で計算する課税される所得の見込みを入れると、所得税額の目安を確認できます。計算する
よくある質問
開業届を出し忘れていました。今からでも出せますか?
出せます。開業届が遅れたことによる罰則はありません。ただし、青色申告承認申請書の期限は開業日から進んでいるため、過ぎていればその年は白色申告になります。翌年分から青色申告にするには、翌年の3月15日までに申請します。
会社員の副業でも開業届を出せますか?
事業として継続的に行うなら出せます。副業の所得が事業所得か雑所得かは、規模や継続性、帳簿を付けているかなどで判断されます。年末調整を受けた会社員でも、給与以外の所得が20万円を超えると確定申告が必要です。
青色申告の承認の通知は届きますか?
通常、承認の通知は届きません。所得税法の定めにより、一定の日までに却下の通知がなければ承認されたものとみなされます。提出した控えや受信通知が、申請した記録になります。
屋号の変更や事務所の移転をしたら、届出は必要ですか?
屋号を変えるだけなら特別な届出は不要で、次の確定申告書や青色申告決算書に新しい屋号を書きます。事務所の新設や移転は、開業届と同じ「個人事業の開業・廃業等届出書」で届け出ます。
e-Taxで提出した場合、控えはどう残せばよいですか?
送信後にメッセージボックスへ届く受信通知が、提出日と内容の記録になります。受信通知と送信したデータをPDFなどで保存し、紙の控えと同じように保管しておきましょう。
まとめ
開業届は開業の日から1か月以内、青色申告承認申請書は1月16日以後の開業なら開業の日から2か月以内が期限です。2枚を同じ日に出し、簿記方式は複式簿記を選んでおけば、初年度から最大の控除を受ける準備が整います。家族への給与や従業員の採用、インボイス登録の予定があれば、関連する届出も同時に検討しましょう。
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出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
