相続対策コンサルティングの流れは「初回面談→資料収集→現状分析→対策提案→実行支援」の5ステップで、初回面談から対策の提案までは2〜3か月が目安です。日数を左右するのは資料収集ですが、資料がそろう前でも概算から始められます。各段階でやること、準備する資料、早く始めるほど有利な理由をまとめます。
この記事の結論
相続対策の依頼は5つのステップで進み、提案までは2〜3か月、実行は対策の内容によって数か月〜数年かかります。贈与も遺言も本人の判断能力が前提のため、元気なうちに始めるほど選べる対策が増えます。
- 流れは「初回面談→資料収集→現状分析→対策提案→実行支援」の5ステップ
- 日数を左右するのは資料収集。完璧にそろえる前に、概算から始められる
- 現状分析では、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかと、納税資金が足りるかを確認する
- 生前贈与の加算期間は、相続開始が2026年12月31日までなら3年、2031年1月1日以後は7年。暦年贈与は早く始めるほど有利
- 不動産が複数ある、自社株がある、相続人の間で調整が必要なら、専門家に依頼する価値が大きい
相続対策を依頼してから完了までの流れと所要日数は?
相続対策を税理士に依頼すると、次の5つのステップで進みます。日数は財産の種類や資料のそろい具合で前後するため、目安として見てください。
| ステップ | 内容 | 目安期間 | 依頼する方がすること |
|---|---|---|---|
| 1 初回面談 | 家族構成・財産の概要・希望を共有 | 1〜2時間 | 気になっていることと財産の概算をメモにしておく |
| 2 資料収集 | 不動産・預金・保険・自社株の資料を準備 | 2週間〜1か月 | 手元の資料を集め、足りない分を取り寄せる |
| 3 現状分析 | 財産評価と相続税の試算、納税資金の確認 | 2週間〜1か月 | 財産や家族についての質問に答える |
| 4 対策提案 | 贈与・保険・遺言などの選択肢と効果を提示 | 2〜4週間 | 家族の意向を踏まえ、採る対策を選ぶ |
| 5 実行支援 | 対策の実行と定期的な見直し | 数か月〜数年 | 贈与契約や遺言の作成を進め、年に一度見直す |
初回面談から対策提案までで2〜3か月、実行はその内容によって数か月から数年単位になります。生前贈与のように毎年積み重ねるタイプの対策は、始めるのが早いほど選択肢が広がります。
現状分析で明らかにするのは、相続税がかかるかどうか、かかる場合の概算額、納税資金が足りるかの3点です。相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、財産から借入金などの債務を差し引いた額がこれ以下なら、相続税はかかりません。一方、基礎控除をわずかに超える程度でも、不動産が多く現金が少ない家庭では納税資金が不足しやすいため、税額と手元資金の両方を確認します。
無料ツール相続税を詳しくシミュレーションする財産と相続人の情報を入れて、相続税の目安を試算できます。面談前の概算にも使えます。計算する
日数を左右する資料収集——何を用意する?
所要日数を最も左右するのは資料収集です。手元にどこまでそろっているかで、試算の精度とスピードが大きく変わります。基本となる資料と入手先は次のとおりです。
- 固定資産税の課税明細書(納税通知書に同封。所有する不動産の一覧と評価の手がかりになる)
- 不動産の登記事項証明書(法務局。名義と持分を確認する)
- 預貯金の残高がわかるもの(通帳や残高証明書)
- 生命保険の証券(契約者・被保険者・受取人を確認する)
- 株式・投資信託の取引残高報告書(証券会社から届くもの)
- 直近の所得税の確定申告書(不動産収入や事業の状況がわかる)
- 借入金の返済予定表、連帯保証をしている場合はその資料
- 自社株があれば、会社の決算書3期分と株主名簿
- 過去の贈与の記録(贈与契約書・贈与税の申告書の控え)
すべてを完璧にそろえてから相談する必要はありません。まず概算でスタートし、対策の方向性が見えた段階で資料を補っていく進め方が現実的です。過去の贈与の記録は、後で説明する生前贈与加算の計算に使うため、見つかった分だけでも残しておきます。
対策提案ではどんな選択肢が出てくる?
現状分析の結果をもとに、贈与・保険・遺言・特例の活用などを組み合わせた提案を受けます。制度には期限や改正があるため、2026年10月時点の主な選択肢と注意点を整理します。
| 対策 | 主な効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 暦年贈与 | 年110万円の基礎控除の範囲なら贈与税をかけずに財産を移せる | 相続開始前の一定期間の贈与は相続財産に加算される(期間は下の表) |
| 相続時精算課税 | 年110万円の基礎控除(2024年1月1日以後)に加え、累計2,500万円まで贈与税がかからない | 60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与が対象。選ぶと撤回できない |
| 生命保険の活用 | 相続人が受け取る死亡保険金は500万円×法定相続人の数まで非課税 | 契約者・被保険者・受取人の組み方で税金の種類が変わる |
| 遺言書の作成 | 分け方を決めておき、相続人どうしの争いと手続きの負担を減らす | 公正証書遺言は公証役場での手続きが必要 |
| 小規模宅地等の特例の準備 | 自宅の土地は330㎡まで評価を80%減額できるなど | 誰が取得するか、居住の要件を満たすかを事前に確認する |
| 住宅取得等資金の贈与 | 省エネ等住宅は1,000万円、その他の住宅は500万円まで非課税 | 2026年12月31日までの贈与が対象。受け取る人の合計所得金額が2,000万円以下などの要件がある |
| 事業承継税制(特例措置) | 自社株の贈与税・相続税の納税が猶予される | 特例承継計画の提出期限は2027年9月30日。贈与・相続の期限は2027年12月31日のまま |
暦年贈与の効果を左右するのが、相続開始前の贈与を相続財産に足し戻す「生前贈与加算」です。加算の期間は3年から7年へ段階的に延びている途中で、相続が起きる時期によって次のように変わります。
| 相続開始の時期 | 相続財産に加算される贈与 |
|---|---|
| 2026年12月31日まで | 相続開始前3年以内の贈与 |
| 2027年1月1日〜2030年12月31日 | 2024年1月1日以後の贈与 |
| 2031年1月1日以後 | 相続開始前7年以内の贈与 |
相続時精算課税の年110万円の基礎控除部分は、相続財産に加算されません。高齢の親から贈与する場合は、暦年贈与と相続時精算課税のどちらが有利かを比べて選びます。なお、教育資金の一括贈与の非課税は2026年3月31日で終了しました。結婚・子育て資金の一括贈与は、2027年3月31日までの拠出(1,000万円まで)が対象です。改正の全体像は令和8年度税制改正のポイントで確認できます。
具体例:財産1億円・相続人3人のケースはどう進む?
自宅3,000万円、賃貸アパート4,000万円、預金3,000万円の計1億円で、相続人が配偶者と子2人というケースで考えます。まず財産評価と相続税の試算を行い、納税資金が足りるかを確認します。
計算例:財産1億円・相続人が配偶者と子2人の場合
例えば、財産がいずれも相続税評価額で、自宅3,000万円(うち土地2,000万円)、賃貸アパート4,000万円、預金3,000万円の計1億円とします。
基礎控除は、600万円×3人=1,800万円、3,000万円+1,800万円=4,800万円です。特例を使わなければ、課税遺産総額は1億円−4,800万円=5,200万円になります。
自宅の土地に小規模宅地等の特例(特定居住用、330㎡まで80%減額)を使えると、減額は2,000万円×80%=1,600万円です。財産は1億円−1,600万円=8,400万円となり、課税遺産総額は8,400万円−4,800万円=3,600万円まで下がります。
さらに預金の一部を死亡保険金に替えると、相続人が3人なら500万円×3人=1,500万円まで非課税になります。
小規模宅地等の特例の適用見込みと、賃貸物件の評価方法で税額が大きく変わるため、ここが分析の中心になります。賃貸アパートの土地にも貸付事業用宅地等(200㎡まで50%減額)を使える場合がありますが、自宅の特例と併用するときは面積の調整が必要です。
試算結果を踏まえて、暦年贈与の計画、生命保険の非課税枠の活用、遺言書の作成支援といった対策を組み合わせた提案を受けます。この規模であれば、初回面談から提案まで2か月程度が標準的です。配偶者が多く相続すると一度目の相続税は抑えられますが、配偶者自身の相続(二次相続)まで含めた合計で比べます。
無料ツール小規模宅地等の特例の減額を計算する土地の評価額と面積を入れると、特例を使った場合の減額の目安を確認できます。計算する
自分で進めるか、税理士に依頼するかの判断軸は?
財産が自宅と預金だけで基礎控除の範囲に収まりそうなら、まずご自身で概算してみる価値があります。一方、財産の評価と分け方の両方で判断が必要な場合は、専門家のサポートが効いてきます。
まず自分で概算してよいケース
- 財産が自宅と預貯金だけ
- 財産の総額が基礎控除の範囲に収まりそう
- 分け方について家族の考えがそろっている
専門家に依頼したいケース
- 不動産が複数ある、賃貸物件がある
- 自社株や事業用の資産がある
- 相続人の間に温度差がある
- 現金が少なく、納税資金に不安がある
急いだ方がよいのは、財産を渡す方の年齢が高い、または健康に不安があるケースです。贈与も遺言も本人の判断能力が前提となるため、対策は元気なうちにしか実行できません。「まだ早いかな」と感じるくらいの時期が、実は適期です。
判断能力が低下すると、対策の多くができなくなる
認知症などで判断能力が低下すると、贈与契約や遺言の作成が有効にできないおそれがあります。成年後見が始まった後は本人の財産を守ることが優先され、相続税対策を目的とした贈与や不動産の組み換えは基本的に認められません。
どこまで自分で進め、どこから専門家に任せるかは、財産の構成と家族の状況で変わります。初回無料で、進め方の見通しをお伝えします。
無料で相談する見落としやすいポイントは?
相続対策は、提案を受けた時点では最適でも、運用の仕方や時間の経過で効果が薄れることがあります。よくある見落としと防ぎ方を整理します。
| 見落とし | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 提案どおり実行して終わりにする | 税制改正や財産内容の変化で、最適な対策が数年で変わる | 年に一度は前提が崩れていないかを見直す |
| 節税だけを見て納税資金を確認しない | 不動産を使った対策で、換金しにくい財産が増える | 対策の前後で、相続税を納める現金が残るかを確かめる |
| 家族への共有が足りない | 遺言や贈与計画の存在や意図が伝わらず、相続の場面で活きない | 内容のすべてでなくても、方針と保管場所は共有する |
| 二次相続を考えない | 配偶者に財産を寄せると、次の相続で負担が重くなる場合がある | 一次・二次をとおした合計の税額で比べる |
| 子の名義の預金を親が管理している | 名義預金として、親の相続財産に含まれる | 贈与契約書を作り、通帳と印鑑は受け取った人が管理する |
| 総額を決めて毎年分けて渡す | 最初にまとめて贈与したとみなされるおそれがある | 毎年、その年の贈与として契約を交わす |
不動産を使った対策は、評価の取扱いが見直されることもあります。購入や建築の前に、その時点の取扱いと、納税資金への影響を確認しておくと安心です。
依頼前に確認したい3つのこと
税理士へ依頼する際は、次の三点を確認しておくと、後からの行き違いを防げます。
- 報酬の範囲:現状分析・試算までか、実行支援や贈与税・相続税の申告まで含むか
- 他士業との連携体制:不動産登記は司法書士、公正証書遺言は公証役場など、誰が段取りするか
- 財産構成に近い案件の経験:自社株や賃貸不動産など、自分の財産に近い相談に対応しているか
見積書の項目が「どの作業に対する費用か」を説明してもらえるかどうかも、良い判断材料になります。費用が決まる要素は相続対策コンサルティングの費用の内訳にまとめています。
相談前の準備は「1枚メモ」で十分
初回面談の準備は、完璧な財産目録でなくてかまいません。次の内容をA4一枚にまとめるだけで、面談の密度は大きく上がります。
- 思いつく範囲の財産と概算額(不動産・預貯金・有価証券・保険)
- 借入金・未払金などの債務
- 家族構成の簡単な図(法定相続人の確認)
- 遺言の有無と、これまでに行った贈与
- 自社株がある場合は、評価の見当と承継の方針
- 気になっていること3つ
分からない項目は「不明」と書いておけば、税理士側がどの資料を集めるべきかを整理します。書き出す作業そのものが、ご自身の考えを整理する第一歩にもなります。
よくある質問
相談したら、その場で契約しないといけませんか?
その必要はありません。初回面談では現状とご希望を伺い、進め方と費用の考え方をご説明します。契約するかどうかは、内容を持ち帰ってご家族と検討してから決めていただけます。
家族に知らせず、自分だけで相談してもよいですか?
ご本人だけのご相談でも問題ありません。ただし、贈与は受け取る人の同意が必要で、遺言も内容によっては家族の理解があるほど円滑に進みます。最初はご本人の考えを整理し、実行の段階で家族に共有する進め方もできます。
相続が起きた後でも、相続税を減らす方法はありますか?
相続が起きた後は、遺産の分け方を工夫して配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を有効に使うことが中心になり、生前に比べて選択肢は限られます。相続税の申告と納付の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月です。
相続税がかからない見込みでも、相談する意味はありますか?
あります。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使って税額がゼロになる場合も、相続税の申告書の提出が必要です。また、税額がかからなくても、分け方をめぐる争いを防ぐ遺言の準備や、二次相続を見すえた検討には意味があります。
まとめ
相続対策コンサルティングは、面談・資料収集・現状分析・対策提案・実行支援の5ステップで進み、提案までは2〜3か月が目安です。生前贈与の加算期間は7年へ延びていく途中です。住宅取得等資金の非課税(2026年12月31日までの贈与)や事業承継税制の計画提出(2027年9月30日まで)のように、期限のある制度もあります。資料がそろう前でも概算から始められるため、元気なうちに一度現状を確認しておきましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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出典・参考(公的機関)
- 国税庁 タックスアンサー No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
- 国税庁 タックスアンサー No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
- 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」
- 国税庁 タックスアンサー(相続税・贈与税)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
