生命保険の相続税非課税枠は500万円×法定相続人|契約形態と納税資金対策

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生命保険の死亡保険金には、相続税の非課税枠「500万円×法定相続人の数」があります。被相続人が保険料を負担し、相続人が受け取る契約なら、預金を保険に組み替えるだけで課税対象を減らせます。保険金は遺産分割を待たずに現金で受け取れるため、納税資金の備えにもなります。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

死亡保険金は「500万円×法定相続人の数」まで相続税がかかりません。ただし非課税枠が使えるのは、被相続人が保険料を負担し、相続人が受け取る契約だけです。

  • 法定相続人が2人なら、500万円×2人=1,000万円まで非課税
  • 相続を放棄した人や、相続人でない孫などが受け取った保険金には非課税枠がない
  • 子が保険料を負担すると所得税(一時所得)、母が負担して子が受け取ると贈与税になる
  • 保険金は受取人固有の財産で、すぐに現金化できるため納税資金や代償金の原資になる
  • 代償分割の原資にするなら、受取人は財産を多く継ぐ人にするのが基本
目次

死亡保険金の非課税枠はいくら?計算方法と使える人

被相続人が保険料を負担していた生命保険の死亡保険金は、民法上の遺産ではありませんが、相続税では「みなし相続財産」として課税の対象になります。そのうえで、相続人が受け取った保険金には非課税枠が設けられています。

非課税限度額は500万円×法定相続人の数です。同じ金額を預金で持っていれば全額が課税対象になるため、預金の一部を生命保険に組み替えると、その分だけ課税対象を圧縮できます。

項目ルール
非課税限度額500万円×法定相続人の数
法定相続人の数相続を放棄した人がいても、放棄がなかったものとして数える
養子の数実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までを数に含める
非課税枠を使える人相続人が受け取った保険金だけ。相続を放棄した人や、相続人でない人(子がいる場合の孫など)が受け取った保険金は対象外
複数の相続人が受け取った場合非課税限度額を、各人が受け取った保険金の割合で分ける
死亡保険金の非課税枠のルール(2026年10月時点)

死亡退職金にも別枠の非課税枠がある

会社経営者や会社員が亡くなり、勤務先から遺族に死亡退職金が支払われた場合も、生命保険金とは別に「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。会社が受け取る法人契約の保険金を原資に死亡退職金を支給するときは、両方の枠を合わせて検討します。

非課税枠が節税につながるのは、財産の合計が相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合です。まず、相続税がかかるかどうかを確認しておきましょう。

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契約形態で税金はどう変わる?相続税・所得税・贈与税

死亡保険金にかかる税金は、誰が保険料を負担し、誰が亡くなり、誰が受け取るかで決まります。非課税枠が使えるのは、相続税がかかる形だけです。

保険料の負担者被保険者受取人かかる税金非課税枠
父父子(相続人)相続税あり
子父子所得税・住民税(一時所得)なし
母父子贈与税(母から子への贈与)なし
父子(父が先に亡くなった場合)保険金は出ないが「生命保険契約に関する権利」が相続税の対象なし
契約形態と税金の関係(父が亡くなった場合の例)

子が自分で保険料を負担していた場合、保険金は子の一時所得になります。一時所得は、保険金から払込保険料と特別控除(最高50万円)を差し引き、その2分の1を他の所得と合算して課税する仕組みです。

計算例:子が保険料を負担していた場合の一時所得

例えば、子が保険料を合計800万円払い込み、父の死亡で保険金1,000万円を受け取った場合です。

  • 一時所得の金額:1,000万円−800万円−50万円=150万円
  • 課税対象(2分の1):150万円÷2=75万円

この75万円が、子の給与などの所得と合算されて所得税・住民税の対象になります。

相続財産が大きく、相続税の税率が高くなる家庭では、あえて子を保険料負担者にして一時所得で受け取る設計が有利になることもあります。どちらが有利かは、相続税の税率と子の所得水準を比べて判断します。

名義ではなく「実際に誰が保険料を払ったか」で判定

契約者を子にしていても、実際には親の口座から保険料を払っていれば、親が負担した保険料として相続税の対象になります。子を負担者にするなら、子の口座から保険料を払い、払込みの記録を残しておきます。

計算例:預金を保険に組み替えると課税対象はいくら減る?

非課税枠の効果が大きいのは、配偶者の税額軽減が使えない二次相続(両親のうち後に亡くなった人の相続)です。子2人が相続人になる場合で、効果を確認します。

計算例:子2人が相続人、財産1億円のうち1,000万円を保険に組み替えた場合

例えば、財産は自宅と賃貸アパートの土地建物7,000万円、預金3,000万円の合計1億円とします。このうち預金1,000万円で、子を受取人とする死亡保険金1,000万円の一時払終身保険に加入したとします。債務や葬式費用などは考慮しない、簡略化した例です。

  • 基礎控除:600万円×2人=1,200万円、3,000万円+1,200万円=4,200万円
  • 非課税限度額:500万円×2人=1,000万円(保険金1,000万円は全額非課税)
  • 保険に入らない場合の課税遺産総額:1億円−4,200万円=5,800万円
  • 保険に入った場合の課税価格:7,000万円+2,000万円=9,000万円(保険金は非課税)
  • 保険に入った場合の課税遺産総額:9,000万円−4,200万円=4,800万円

課税遺産総額が1,000万円小さくなり、その部分にかかるはずだった相続税(税率は10〜55%の超過累進)が減ります。

実際の相続税額は、財産の評価や小規模宅地等の特例、相続人ごとの取得額によって変わります。家族構成と財産額を入れて、まず全体の税額をつかむところから始めましょう。

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納税資金になぜ生命保険が役立つ?

相続税は原則として、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に、申告と現金での納付をしなければなりません。財産の大半が自宅や賃貸不動産、自社株だと、税額は大きいのに納める現金が足りない事態が起こります。

しかも、亡くなった人の預金は、遺産分割がまとまるまで自由に引き出せないのが通常です。遺産分割前の払戻し制度もありますが、引き出せる金額には上限があります。死亡保険金は受取人が請求すれば支払われ、遺産分割を待たずに使えるため、納税資金として頼りになります。

現金が足りないときの方法として、分割で納める延納や、財産そのもので納める物納もあります。ただし、どちらも金銭で一括納付するのが難しい場合に限って認められ、担保や利子税の負担があります。納税のために相続した土地を売る場合は、相続財産の取得費加算を計算することで、譲渡所得の税金を抑えられるかを確認できます。

  • 相続税の概算額と、財産のうち現金にしやすいものの割合
  • 誰がどの財産を継ぎ、誰がいくら相続税を納めることになるか
  • 保険金の受取人と金額が、納税する人・納税額と合っているか
  • 配偶者が亡くなったときの二次相続まで含めた税額
  • 自社株を持つ経営者は、株価の評価と承継の方針

自社株の比重が大きい場合は、保険と並行して事業承継税制(自社株の納税猶予)の要件も確認しておきます。納税資金の必要額そのものを抑えられる可能性があります。

札幌市内の方の相続税の申告先

相続税の申告書は、亡くなった人の住所地を所轄する税務署に提出します。市内は区によって所轄が分かれ、北区・東区は北、豊平区・南区・清田区は南、白石区・厚別区は東、西区・手稲区は西の各税務署です(正式名称は「札幌北税務署」など)。中央区は、おおむね西10丁目以東が中、大通西11丁目以西などが西税務署です。

2026年7月10日からは札幌業務センターが5署の内部事務を集約しています。書面の申告書を郵送する場合は同センター宛てに送り、e-Taxや窓口への持参は所轄の税務署です。

遺産分割・代償分割にはどう使う?受取人の決め方

死亡保険金は受取人固有の財産で、原則として遺産分割の対象になりません。指定した人に、ほかの相続人の同意なしで現金を渡せるのが特長です。

事業を継ぐ子に自社株や事業用の不動産を集中させると、ほかの子との間で取り分の差が生まれます。このとき、財産を多く継ぐ子がほかの相続人に現金を払って調整する方法を「代償分割」といい、その代償金の原資に死亡保険金が使えます。

ほかの子を受取人にすると、調整にならないことがある

公平のつもりで、事業を継がない子を保険金の受取人にすると、その保険金は遺産の外にあるため、遺産分割や遺留分の計算では原則として考慮されません。受け取った子が、さらに遺産から法定相続分や遺留分(金銭で請求できる最低限の取り分)を求める余地が残ります。

代償金の原資にするなら、受取人は財産を多く継ぐ子にし、その子が保険金から代償金を払う形にします。遺言で分け方を決めておくと、意図した分け方を実現しやすくなります。

なお、保険金の額が遺産全体に比べて極端に大きく、相続人の間で著しい不公平が生じる場合は、遺産分割で考慮される可能性があるとした裁判例もあります。保険金の額は、遺産全体とのバランスを見て決めましょう。

保険金の額や受取人の決め方は、財産の構成と家族の事情で答えが変わります。相続税の試算とあわせて、初回無料で確認できます。

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加入・見直しのときに確認したいこと

相続対策で使われることが多いのは、保障が一生続く終身保険です。保険料をまとめて払う一時払いなら、手元の預金をそのまま組み替えられます。ただし、高齢になるほど健康状態によって加入できなかったり、保険料が割高になったりするため、早めの検討が向いています。

孫を受取人にするときの注意

孫は、養子になっている場合や代襲相続人である場合を除き、相続人ではありません。孫が受け取った保険金には非課税枠がなく、一親等の血族でないため相続税が2割加算されます(孫養子も2割加算の対象です)。

さらに、保険金を受け取った孫は、遺贈で財産を取得した人として扱われます。そのため、孫が生前に受けた贈与も、相続財産に足し戻す「生前贈与加算」の対象になります。

保険料を贈与で用意するときの注意

親が子に現金を贈与し、子がその現金で保険料を払う方法もあります。この場合は、贈与契約書を作り、子の口座から保険料を払うなど、子が負担者であることを記録で示せるようにします。

相続や遺贈で財産を受け取る人が受けた贈与は、相続開始前の一定期間分が相続財産に加算されます。期間は段階的に延びています。

相続が開始した日加算の対象になる贈与
2026年12月31日まで相続開始前3年以内の贈与
2027年1月1日〜2030年12月31日2024年1月1日以後の贈与
2031年1月1日以後相続開始前7年以内の贈与
生前贈与加算の期間(暦年課税。3年より前の延長部分は総額100万円まで加算しない)
  • 保険料の負担者・被保険者・受取人が、狙った税金の形になっているか
  • 受取人が、先に亡くなった人や離婚した配偶者のままになっていないか
  • 受取人が相続人か(相続人でない孫などは非課税枠なし)
  • 非課税枠を超える保険金が、ほかの財産とのバランスを崩していないか

よくある質問

相続税がかからない見込みでも、生命保険は役に立ちますか?

役に立ちます。非課税枠による節税効果はなくても、遺産分割を待たずに現金を渡せるため、葬儀費用や当面の生活費、代償金の原資になります。受取人を指定できるので、特定の人に多めに残したい場合にも使えます。

死亡保険金の請求に期限はありますか?

保険法では、保険金の請求権は3年で時効により消滅するとされています。相続税の申告・納付は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内のため、納税資金に使うなら早めに請求手続きを進めます。

生命保険料控除と、相続税の非課税枠は関係がありますか?

別の制度です。生命保険料控除は、生前に払った保険料をその年の所得税・住民税の計算で差し引く制度です。相続税の非課税枠は、亡くなった後に受け取る死亡保険金に適用されます。

会社が契約している保険の保険金にも非課税枠はありますか?

会社が受取人の法人契約では、保険金は会社の収入(益金)になり、相続税の非課税枠はありません。会社の純資産が増えて自社株の評価が上がることもあります。会社がその資金で遺族に死亡退職金を払えば、遺族側で死亡退職金の非課税枠を使えます。

まとめ

死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。被相続人が保険料を負担して相続人が受け取る形なら、預金を組み替えるだけで課税対象を減らせます。保険金はすぐに現金化できるため、納税資金や代償金の原資としても有効です。契約形態や受取人を誤ると効果が失われるため、相続税の試算と遺産の分け方をセットで設計しましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

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