内装工事業の税務調査では、期末前後に引き渡した工事の売上の計上時期、職人への外注費が給与に当たらないか、施工中の現場の原価(未成工事支出金)と材料在庫、私的な費用の混在が重点的に見られます。工事台帳と引渡しの書類、外注の契約書をそろえておくことが一番の備えです。
この記事の結論
調査の論点は「売上の期ズレ」「外注費と給与の区分」「未成工事支出金と材料の棚卸し」「経費の中身」にほぼ集約されます。日頃から工事台帳と書類で説明できる状態にしておけば、指摘は減らせます。
- 売上は原則として引渡しの日に計上。期末案件は工事台帳と引渡書類で説明できるようにする
- 職人への支払いは、請負の契約書・請求書という形式と、仕事の進め方の実態を一致させる
- 施工中の現場の原価は未成工事支出金に。期末の材料在庫の棚卸しも漏らさない
- 私的費用の混在、残材・スクラップの売却収入、元請けとの値引き・リベートの書面は重点項目
- 税額を直せる期間は原則5年、不正があれば7年。加算税は修正の時期と不正の有無で変わる
内装工事業の税務調査で見られやすい論点
店舗やオフィスの内装工事業は、1件あたりの工事単価が大きく外注も多いことから、税務調査で確認される論点が比較的はっきりしている業種です。連絡が来てから慌てるのではなく、何を見られるのかを知ったうえで日頃の経理を整えておくことが、何よりの対策になります。
| 論点 | 調査で確認されること | 説明に使う資料 |
|---|---|---|
| 売上の計上時期 | 期末前後に完成・引渡しした工事が、正しい期の売上になっているか | 工事台帳、工事完了確認書・引渡書 |
| 外注費と給与の区分 | 専属に近い職人への支払いが、実態として給与ではないか | 請負契約書・注文書、職人からの請求書 |
| 未成工事支出金・材料 | 施工中の現場の原価や材料在庫を、当期の経費にしていないか | 現場別の原価の集計、棚卸表 |
| 経費の中身 | 車両費・工具費・廃材の処分費に私的な支出が混ざっていないか | 領収書と使用目的の記録 |
| 雑収入・リベート | 残材やスクラップの売却収入、元請けとの値引き・紹介料が帳簿に載っているか | 売却の記録、精算の書面 |
| 消費税・インボイス | 外注先の登録状況に応じた仕入税額控除になっているか | 外注先の登録番号の一覧、請求書 |
以下、売上・外注費・原価・経費の順に、指摘されやすい理由と備えを見ていきます。自社の弱いところを確かめる決算前のチェックリストとしても使えます。決算全体の確認項目は経理・決算セルフチェックにまとめています。
売上はいつ計上する?引渡し日と期末案件の説明
内装工事の売上は、原則として工事が完成し、相手方に引き渡した日に計上します。調査で最初に確認されるのが、期末前後に完成した案件の計上時期です。引渡しは3月なのに、請求書の発行が4月だからという理由で翌期の売上にしていると、期ズレとして指摘されます。
引渡しの日は、作業を終えた日、相手方の検収が終わった日、相手方が使い始められるようになった日など、工事の内容に合った基準を選び、毎期同じ基準で判定します。案件ごとに基準を変えると、利益を調整していると受け取られかねません。
期をまたぐ工事・追加工事で注意すること
- 1つの契約で複数の店舗やフロアを請け負い、区切りごとに引き渡して代金を受け取る場合は、引き渡した部分ごとに売上を計上する(部分完成基準)
- 工期が事業年度をまたぐ工事は、選択により、工事の進み具合に応じて売上を計上する方法(工事進行基準)を使えることもある
- 期末までに終わった追加工事・変更工事は、金額が確定していなくても見積額で売上に計上し、確定したときに差額を調整する
- 着工前や施工中に受け取った着手金・中間金は前受金とし、引渡しのときに売上へ振り替える
年度末に改装・移転工事が集中する場合
札幌では年度末の店舗改装やオフィス移転の工事が集中しやすく、期末に完成案件が重なりがちです。現場ごとに着工日・完成日・引渡し日・請求日・入金日を工事台帳で管理し、工事完了確認書や引渡書など、引渡しの事実が分かる書類を残しておきましょう。
外注費か給与か:職人への支払いの判断基準
内装業では大工、クロス、電気、設備など多くの職人に外注します。特定の職人がほぼ専属で働き、報酬が日当計算で、道具や材料も会社持ちといった実態だと、外注費ではなく給与と認定されるおそれがあります。判断は契約書の名目ではなく、次のような実態を総合して行われます。
| 判断の視点 | 外注費(請負)に近い | 給与(雇用)に近い |
|---|---|---|
| 仕事の受け方 | 現場・仕事の単位で受発注し、断ることもできる | 会社が毎日の現場を割り振り、断れない |
| 報酬の決まり方 | 工事や作業の出来高で決まり、職人が請求書を出す | 日当・時間給で会社が計算する |
| 指揮監督 | 作業の進め方や時間は職人が決める | 作業の方法や時間を会社が細かく指示する |
| 代わりの人 | 自分の判断で他の職人に任せられる | 本人が作業しなければならない |
| 材料・道具 | 職人が自分で用意する | 会社が支給する |
| 仕上がりの責任 | 手直しは職人の負担で行う | 手直しの時間にも給与が支払われる |
給与と認定されると、源泉所得税の徴収漏れと、消費税の仕入税額控除の否認が同時に起こります。給与は消費税の課税仕入れに当たらないため、外注費として差し引いていた消費税は取り消されます。源泉所得税の納付漏れには不納付加算税もかかり、追徴は小さくありません。
請負契約書や注文書を交わし、職人側から請求書を受け取る形式を整えるとともに、仕事単位の受発注や他社案件の受注の自由など、実態としても請負らしい働き方になっているかを見直しておきましょう。
一人親方が免税事業者の場合のインボイス
外注先の職人がインボイス(適格請求書)の登録をしていない免税事業者の場合、支払った消費税の全額は差し引けません。経過措置により、2026年9月30日までは80%、2026年10月1日〜2028年9月30日は70%、2028年10月1日〜2030年9月30日は50%を控除でき、その後も段階的に縮小します。割合は工事の完了などの課税仕入れの日で判定し、帳簿には経過措置の適用を受ける旨を記載します。外注先ごとの登録番号の管理方法はインボイス制度の実務ガイドで確認できます。
未成工事支出金と材料の棚卸し
期末時点で施工中の現場にかかった材料費や外注費は、当期の原価ではなく未成工事支出金(仕掛り)として資産に計上するのが原則です。完成していない現場の原価だけを先に経費にすると、売上と原価の対応が崩れるため、調査ではこの対応関係が細かく確認されます。
あわせて、期末に倉庫や現場に残っているクロス、ボード、金物などの材料在庫の棚卸しも忘れがちなポイントです。「材料は買った期の経費」という処理を続けていると、在庫の分だけ利益が過少になり、指摘の対象になります。
計算例:未成工事支出金と材料在庫を計上し忘れた場合
例えば、期末に施工中の現場で材料費40万円と外注費60万円がかかっており、倉庫に15万円分のクロスとボードが残っていたとします。これをすべて当期の経費にしていた場合、利益が少なくなっていた金額は次のとおりです。
- 未成工事支出金:400,000円+600,000円=1,000,000円
- 計上漏れの合計:1,000,000円+150,000円=1,150,000円
調査では、当期の所得が1,150,000円少なかったとして修正を求められます。未成工事支出金は翌期に工事が完成して売上を計上した時点でその現場の原価に、材料在庫は実際に使った時点で原価にするのが正しい処理です。
現場ごとに材料・外注・労務の原価を集める工事台帳があれば、期末にどの現場がいくら未成工事支出金になるかがすぐに分かります。原価の集め方や勘定科目の整理は中小企業の経理・会計処理ガイドも参考にしてください。
経費の中身:私的費用・工具・スクラップ収入
車両費、工具購入費、廃材の処分費は金額が膨らみやすく、事業との関連性が見られます。自宅の改装に使った材料を会社の経費に紛れ込ませるといった公私混同は、典型的な指摘事項です。
- 車両を私用にも使っている場合、個人事業なら事業で使った割合で按分し、法人なら社長の私的な利用が役員給与と扱われないよう利用記録を残す
- 廃材の処分費は、処分業者の請求書とマニフェスト(産業廃棄物管理票)の控えで、現場と数量の裏付けを取れるようにする
- 余った材料やスクラップを売却した収入は、雑収入として漏れなく計上する
- 元請けからの値引きやリベート、紹介料のやり取りは、口頭で済ませず金額の根拠が分かる書面を残す
- 元請けや施主との飲食は交際費として区分し、1人当たり10,000円以下の飲食は、参加者などを記録すれば交際費から除ける
電動工具や測定機器は、取得価額で処理が変わります。10万円未満なら消耗品費として全額経費にでき、青色申告の中小企業者等は、2026年4月1日以後に取得した40万円未満の資産を年300万円まで全額経費にできます(従業員400人超の法人は対象外、2029年3月31日までの取得)。高額な工具を毎年まとめて経費にしていると、資産計上が必要なものが紛れていないかを確認されます。
無料ツール工具・機器の処理方法を3択で比較する全額経費・一括償却・少額減価償却資産の特例のどれが有利か、取得価額を入れて比べられます。計算する
税務調査の流れと準備する資料
税務調査は、事前の通知から始まり、実地での確認を経て、結果の説明で終わるのが一般的な流れです。税理士に税務代理を頼んでいる場合は、税理士にも通知が届き、日程の調整や当日の説明を任せられます。
- 事前通知税務署から電話などで、調査を始める日時・場所・目的、対象の税目と期間、調べる帳簿書類などが伝えられます。日程は業務の都合に合わせて相談できます。
- 事前の準備対象期間の帳簿・工事台帳・契約書・請求書をそろえ、期末案件の計上時期や外注先の実態など、指摘されそうな論点を確認します。
- 実地の調査事務所で社長への事業内容の聞き取りと、帳簿・書類の確認が行われます。必要に応じて倉庫や現場の確認、取引先への照会が行われることもあります。
- 結果の説明誤りがあれば内容の説明を受け、修正申告を勧められます。誤りがなければ、その旨の通知を受けて終了します。
- 修正申告・納付修正申告をして、追加の税金と加算税・延滞税を納めます。修正申告をしない場合は、税務署が更正を行います。
準備する資料は次のとおりです。法人の帳簿書類は7年(欠損金が生じた事業年度は10年)保存が必要で、電子取引で受け取った請求書などは、2024年1月1日以後、電子データのまま保存する必要があります。
- 総勘定元帳・仕訳帳、決算書・申告書の控え
- 工事台帳(現場ごとの売上・原価、着工日・完成日・引渡し日)
- 請負契約書・注文書・見積書、追加工事や変更工事の合意書
- 工事完了確認書・引渡書など、引渡しの事実が分かる書類
- 外注先との契約書・請求書と、外注先の登録番号の一覧
- 材料の納品書・請求書と、期末の棚卸表
- 通帳・現金出納帳、車両や工具の購入資料と固定資産台帳
所轄の税務署と書類の提出先
調査は、納税地を所轄する税務署が行います。札幌市内は札幌中・北・南・西・東の5つの税務署が区ごとに管轄を分け、中央区はおおむね西10丁目を境に札幌中税務署と札幌西税務署に分かれます(個別の住所は国税庁の管轄区域表で確認)。2026年7月10日からは5署の内部事務が札幌業務センターに集約され、書面の提出は同センターへの郵送、e-Taxと窓口への持参は所轄の税務署です。
指摘を受けたら?修正申告・加算税とさかのぼる期間
調査で誤りが見つかると、本来の税金との差額に加えて、加算税と延滞税がかかります。加算税の割合は、修正の時期(調査の通知の前か後か)や、仮装・隠ぺいといった不正の有無で変わります。
| 種類 | 主な場面 | 割合(原則) |
|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 申告した税額が少なかった | 10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%) |
| 無申告加算税 | 期限までに申告しなかった | 15%(50万円超の部分は20%。2024年1月1日以後に法定申告期限が到来するものは300万円超の部分30%) |
| 重加算税 | 売上の除外や架空の外注費など、仮装・隠ぺいがあった | 過少申告・不納付の場合35%、無申告の場合40% |
| 延滞税 | 本来の納期限より納付が遅れた | 納付までの日数に応じてかかる |
税務署が税額を直せる期間は、原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為がある場合は7年です(法人税の欠損金額に係る更正は10年)。売上の除外や架空の外注費は不正と判断されやすく、期間が延びるうえに重加算税の対象になります。
優良な電子帳簿で過少申告加算税が軽くなる
一定の要件を満たす優良な電子帳簿を備え、あらかじめ届出をしておくと、その帳簿に関係する申告漏れの過少申告加算税が5%軽減されます。仮装・隠ぺいがある場合は対象外です。会計ソフトで記帳している会社は、要件を満たせるかを確認しておく価値があります。
ツール延滞税・加算税の概算を計算する追加で納める税額と納付までの日数から、延滞税と加算税の目安を確認できます。計算する
調査に税理士が立ち会う場合の進め方は、税務調査の立会いを依頼してから完了までの流れで紹介しています。
外注費と給与の区分や未成工事支出金の計上は、契約書と現場の実態で判断が変わります。調査の前の確認から初回無料でご相談いただけます。
無料で相談するよくある質問
個人事業の内装業者にも、同じ論点で税務調査が来ますか?
来ます。所得税と消費税の調査になり、売上の計上時期、外注費と給与の区分、車両費や自宅兼事務所の按分が中心に見られます。青色申告者の帳簿と決算関係書類は7年保存が原則で、前々年分の所得が300万円以下なら、現金預金取引等関係書類は5年で足ります。
職人に日当で支払っていると、給与と判断されますか?
日当で計算しているだけで給与と決まるわけではなく、指揮監督の有無、材料や道具を誰が用意するか、他の人に任せられるかなどを総合して判断されます。ただし、日当払いで毎日の現場を会社が割り振り、他社の仕事もしていない場合は、給与に近い実態と見られやすくなります。
調査の前に誤りに気づいたら、どうすればよいですか?
早めに自主的に修正申告をします。調査の通知を受ける前に修正すると、加算税の負担が軽くなる仕組みがあります。期ズレのように翌期に売上を計上済みの誤りは、両方の期の所得を直す必要があるため、どの期をどう修正するかを整理してから手続きします。
現金で受け取った小口の工事代金も調べられますか?
調べられます。見積書や請求書の控え、工事台帳と、通帳・現金出納帳の入金を突き合わせて確認されます。小さな修繕や手直しの代金を現金で受け取ったときは、その日のうちに記録し、領収書の控えを残しておきましょう。
まとめ
内装工事業の税務調査は、売上の期ズレ、外注費と給与の区分、未成工事支出金と材料の棚卸し、経費の中身と雑収入に論点が集まります。工事台帳と引渡書類、外注の契約書と請求書、期末の棚卸表をそろえ、形式と実態が一致しているかを決算前に確認しておくことが、調査への一番の備えになります。指摘を受けた場合は、加算税と延滞税の負担も含めて早めに対応を決めましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
内装工事業の税務調査・経理体制のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
